原稿用紙に万年筆で文章を書いている年配の人の手元

この記事の要点

まえがきは誰に何を伝える本かを案内し、本文の書き出しは具体的な場面へ導きます。最初は仮の言葉で進め、本文が揃ってからまえがきとあとがきを整えると内容に合う文章になります。

まえがきは誰に何のために書いた本かを伝えます

まえがきは、読者が本文へ入る前の案内です。詳しい半生をここで説明するより、誰に向けて、なぜ書き、どの期間を収めたかを示します。本を手に取った人が、どんな気持ちで読めばよいか分かる言葉を選びます。

書くことを整理するなら、読者、執筆の理由、対象の期間、読み方、感謝の順にメモできます。すべてを同じ長さで書く必要はありません。「順番に読まなくても、気になる章からどうぞ」と、本の構成に合う読み方を伝えることもできます。

例:「この本は、家族に昔の暮らしを伝えたくて書きました。生まれ育った家から、仕事を離れるまでの思い出を収めています。写真を眺めながら、気になるところから読んでもらえれば嬉しく思います。記憶を確かめるのを手伝ってくれた家族に感謝します。」

これは説明のための架空の例文です。実際には、本に含める時期と内容に合わせて書き替えます。自分を必要以上に卑下する挨拶や、読者への長い断りより、残したかったものを率直に伝えるほうが本の目的をつかみやすくなります。

本文の書き出しは生まれた頃・大切な場面・動機から選べます

本文の最初は、必ず生年月日で始めなくてもかまいません。人生の流れをたどるなら生まれた頃、強く伝えたい経験があるならその場面、本を書く経緯が主題につながるなら動機から入れます。次は人名や地名を用いない架空の例です。

例:生まれた日の出来事から始める

生まれた頃を描く場合は、自分が直接覚えていることと、後に聞いたことを分けます。家族の言葉や日記を手がかりに、どう知った話かを添えます。例:「私が生まれた朝は、庭に雪が残っていたと母から聞きました。家族は火鉢を囲み、私の名前を考えていたそうです。その話を聞くたび、会ったことのない当時の家族が近くに感じられます。」

例:いま一番伝えたい場面から始める

仕事や家族の転機から始めるなら、その場で見えたものを選びます。背景の説明は必要に応じて後から補えます。例:「仕事を終えた日の夕方、私は長く使った机を拭きました。引き出しの奥から、入社した頃の手帳が出てきました。その薄い冊子を開くと、初めて出勤した朝の緊張が戻ってきました。」

例:本を書こうと思ったきっかけから始める

執筆の動機に具体的な出来事があるなら、その場面を入口にできます。まえがきで目的を伝えている場合は、同じ説明を繰り返さず体験を描きます。例:「古い写真を見ていた孫に、この家では誰と暮らしていたの、と聞かれました。答えているうちに、私しか知らない話があることに気づきました。忘れないうちに書いておこうと思ったのは、その日のことです。」

書き出した後は読者に必要な前提を短く補います

場面から始めたら、読者が時期や人物の関係を追えるようにします。冒頭の印象を大切にしつつ、「仕事を辞めた年のことです」などの目印を置きます。書き手には明らかな家や職場でも、初めて読む人には説明が必要です。

最初の段落で人生全体の結論を出す必要はありません。例えば机の場面から入ったなら、次は入社した頃へ戻り、何を覚えたかを書くことができます。どの時点へ戻ったかを伝えれば、時間を行き来する構成でも読み進められます。

書き出しだけを何度も磨いて止まってしまう場合は、仮の文章に印を付けて次へ進みます。本文を書いた後で、より本の中心に近い場面が見つかることもあります。最初の段落を最後まで変えてはいけないわけではありません。

まえがきは本文を終えてから整えると約束が揃います

まえがきの下書きは、書く目的を確かめるために先に作れます。ただし、完成させるのは本文が揃ってからにすると、本の内容とのずれを減らせます。書いているうちに対象の期間や中心になる話が変わることがあるためです。

本文を読み終えたところで、まえがきに書いた目的と目次を並べて見ます。収めるつもりだった時期を省いたなら、期間の説明を直します。家族の記録として始めて仕事の経験が中心になったなら、その内容が伝わる案内に変えます。

書き出しとまえがきは役割が違います。本文は経験を読む場所、まえがきはその本の読み方を知る場所として確かめます。収録した範囲の見直しは構成と目次の決め方につながります。

章立てを知って書き直した著者の体験もあります

『太陽が来たよ』の著者、宝 真知子さんは、相談会を経て原稿を見直した経験を語っています。書き直しに関するインタビューの原文を、次に引用します。文章の完成形を初めから知っていなくても、読み返して整えていく経過が分かります。

まずはお手軽出版ドットコムの出版相談会に参加し、出版の流れや原稿の書き方を相談しました。その時に初めて本には小見出しや章立てがあることを知りました。

あらためて自分が書いた原稿を読みなおすと、なんだか単なる「日記」のように感じたので、書きなおすことに決めました。小見出しや章立てを意識しながら、どうやったら分かりやすい文章が書けるのかを考えました。子供たちと内容をチェックしながら共に作り上げていきました。

出典:お手軽出版ドットコム「お客様インタビュー」宝 真知子さん『太陽が来たよ』(原文のまま引用)。個別の執筆経験であり、同じ手順を全員が採る必要はありません。自分の原稿でも、まず目次を作り、見出しと本文が合うかを確かめるところから始められます。

あとがきは書き終えたいまの気持ちと謝意を添えます

あとがきには、書き終えて分かったこと、協力してくれた人への礼、読者への言葉を置けます。本文で描いた当時の気持ちとは別に、いま振り返ってどう思うかを伝える場所です。感謝する人の名前を載せる場合は、その表記も確認します。

例:「書き終えて、私の暮らしが多くの人に支えられていたことを思いました。古い写真を探し、話を聞いてくれた家族にお礼を伝えます。この本をきっかけに、それぞれの思い出も聞かせてもらえたら嬉しく思います。」これも架空の例文なので、自分の気持ちに合う部分から考えます。

まえがきの目的をそのまま繰り返すより、書いた後の変化が伝わるかを読み返します。文章の調子は読みやすい文章の書き方で整え、冒頭と末尾で本全体の印象を確かめます。本文に合う言葉が見つかったら、書名や副題の候補にもできます。

この記事に関する質問

まえがきとあとがきの両方が必要ですか?

形式だけのために両方を書く必要はありません。まえがきで本の目的を伝え、末尾に短い謝辞だけを置く形も考えられます。両方を付けるなら、読む前に知りたい情報と、読了後に届けたい言葉を分けると重複を避けられます。

出典・参考

書き終える前から、本の姿を考えておくと迷いません。

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